2005年6月8日「日本農業新聞」より転載
※発売時(2005年)の内容をそのままテキスト化
したものです
 日本酒やワイン、ビールといった醸造酒は古くから人々に
飲まれてきた。例えばビールは、5000年以上前のエジプトで
原型となる麦から造った酒が飲まれていたし、ワインも果汁を
発酵させればよいだけなので、紀元前から飲まれている。
では、日本酒はどうだろうか。
 米から造る醸造酒という意味では、すでに万葉の時代から
飲まれているが、これはどぶろくのようなもので、今の清酒
とはかなり異なる。
麹(こうじ)菌や酵母を使い、並行複発酵という方式で米の
糖分を余すことなく酒にするという意味では、その起源は
室町時代後期に確立したようだ。
 ほぼ同時期から江戸初期までの間に、火入れ殺菌により
発酵を止めて酒を安定させる技術、にごり酒をこして澄んだ
酒にする方法が発見され、ほぼ今の清酒の原型が出来上がる。
当時の銘酒の産地としては、関西の洛中、奈良、伊丹などが
挙げられ、灘が名声を博するのはもう少ししてからのことだ。
 室町時代後期に確立した酒の造り方は、菩提(ぼだい)もと
仕込み(別名 水もと仕込み)と呼ばれるもので、もろみを
造るときに、麹米を袋に入れて、お湯の中でもみだしていくと
いう特徴を持つ。
原理的には生もと・山廃など現代の酒の系譜に連なるのだが、
いかにも手間がかかるので、明治初期にはこの方式は
ほぼ消えた。
 しかし、この菩提元の発祥の地である奈良県では、今でも
この方式の酒造りが伝承されている。引退した杜氏(とうじ)
とともに若い蔵元が水もと仕込みを復活させてと聞き、
奈良県香芝市の大倉本家を訪ねた。ろ過も火入れもしない
生の状態で瓶詰めされた酒は、上品なヨーグルトに近い
不思議な味わいであった。製造量も少なく、県内限定の販売と
いうことで今年はもう完売してしまったようだが、来年も
仕込むとのことなので、一度は試してみたい酒だとお薦めできる。 
 (酒文化研究所社長・狩野卓也)

   
   奈良の地酒 金鼓/大倉 


 
 
 
 
 


 
   
   
 
 
 


 
 


 
 


 
 


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