昔は田舎にいくと祭りのときなどに飲むことができたどぶろく。
アルコール分が含まれているので、勝手に造ることは許されない。
戦後はその取締が厳しくなり、とんとお目にかかることができなく
なってきた。
どぶろくとは「清酒のもろみをろ過しないでそのまま飲む酒」
とも言えよう。酒税法上は、清酒ではなくて濁酒という
カテゴリーになるのだが、この酒の醸造の許可は戦後、
新規に付与されることがなかったが、規制緩和の特区で
少しずつ飲めるようになりはじめている。
このどぶろくを昭和初期から平成に至るまで製造してきたのが
奈良県香芝市にある大倉本家。県の神社庁の御神酒として
特別に醸造してきた。一時は廃業も検討したらしいが、
どうしても酒を造り続けたいと、四代目の大倉隆彦現社長が
父親を説得して、2003年から醸造を再開、同時に濁酒造りも
復活した。
大倉本家の濁酒は、生酛法よりも古い、15世紀の室町時代の
水酛法で仕込まれる。半切り桶に水と生米を浸し、袋に入れた
蒸米を揉みだすという水酛仕込みは、天然の乳酸をふんだんに
取り入れる方法で、暖かい時期の仕込み法としては理に適って
いる。
しかし、非常に手間がかかるため明治から大正期にかけて
ほぼ消滅した。奈良県南部の小さな蔵にこの製法が伝承されて
いたのは奇跡に近い。肝心の味は、飲むというよりも食べると
表現した方が適切である。ヨーグルトやクリームのような
複雑で深い味わいが楽しめる。